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一般社団法人 新規事業・新規市場創出研究会

新規市場研究会

大日本印刷株式会社

大日本印刷のMaaSへの取り組み

「モビリティ事業部」の新設

大日本印刷は、成長領域として期待する「モビリティ事業部」を2017年4月に立ち上げた。当初は自動車パーツの拡大路線を歩んでいたが、ちょうど市場にMaaSというキーワードが出てきたタイミングとマッチし、ICTサービス分野での事業開発に本腰を入れ始めたのだ。しかし、「立ち上げ当初は、交通事業者でもなければ、ITベンダーでもない自分たちが、どういう判断基準で事業開発を進めていこうかと悩んだ」と椎名氏。そこで、事業を始めるために『スモールスタート可能でかつニッチ市場で事業化すること、最終的にはデータ活用を目指すこと等』の独自の判断基準を作った。同氏は、「業界の通常の判断基準を意識せず設定した。抽象的であるが、逆にこの判断基準に合致しさえすれば、積極的にどんどんやっていこうと考えた」と明かす。

ICT/サービス分野での新たな事業開発

そうした中、深刻な物流課題を抱えるフィリピンで、ICT/サービス分野での新規事業開発に取り組み始めた。実はフィリピンには車を保有できない低所得者層が数多く存在する。もし、車を持つことができれば、ドライバーとしての雇用機会が得られ、就業できれば比較的安定した収入を得ることができる。この問題を解決するため、「ローンを借りられる仕組みをIoTで作れないか、というのがこの事業の入り口である」と同氏。具体的には、トライシクルと呼ばれる小型三輪車に、エンジンをロックすることができるデバイスを組み込み、遠隔監視を行う。銀行や金融業者にとっては、たとえ返済が滞ったとしても、資産を押さえることができるため、これが担保となり得る。この活動は元々、GMS(Global Mobility Service㈱)のビジネスモデルであり、これまで既に1万人以上のドライバーを生み出してきたが、このうち、優秀で勤勉なドライバーを更に次のステージにステップアップさせようというのが大日本印刷の狙いだ。

雇用創出×物流改善というオリジナル性

就業機会・雇用創出というGMSの仕組みと大日本印刷のICTを活用した高効率な物流管理システム、物流課題を解決する需要マッチングの仕組みをエコシステムで廻していく。ITシステムとしては汎用的な技術かも知れないが、そこには新たな事業を開始するための判断基準に合うオリジナリティがしっかりと入っている。「GMSのモデルも人の移動に留まらせてはもったいない。これを物流の分野に応用展開していこうというのが、GMSとの協業戦略を練る中で出した答えである。但し、フィリピンはコロナの影響は深刻で、当初予想していた事業規模はまだ確保できていない。なんとか早期に事業化へ持っていきたい」と同氏は話す。

今後のデータ活用と課題

事業開発の行先としては、データの活用を視野に入れている。どのお店に、どんなものが、どのくらい運ばれたかが、データとして蓄積されるため、今後スケール化していけばマーケティングに活用できる。しかし椎名氏は、「PoCでデータを集め、渋滞や移動時間、どこに時間がかかっているかを調べたら、モノが届いてからお金をもらうまでの時間の方が長かった」。実は現地の商習慣で、届いたモノがオーダーと合致しているかを確認するために、開梱し、一つずつカウントしてから、細かな現金を数え始めるためである。「配送ルートの効率化だけではデリバリータイムが縮まらない。モビリティと関係ないところ、見えないところにも多くの課題があることがやってみてわかった」。

また、同氏は最後に、「もともとフィリピンでは、当日納品予定の3分の1が届かないという課題があったが、受け取り側もそれが普通だと思い、困っていなかった。こうした日常では気付かない、潜在化していない需要を掘り起こすとスタンダードになる。本質的な社会課題に対応した社会的な価値を提供するサービスを世の中にサスティナブルに提供していきたい。」と熱い思いを語ってくれた。
名称
大日本印刷株式会社
所在地
〒162-8001 東京都新宿区市谷加賀町1-1-1
インタビュー
大日本印刷株式会社 モビリティ事業部 事業企画室  室長    椎名 隆之 様
※インタビュー内容は2020年10月当時のものになります